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一般社団・財団法人の移行認可後の運営実務

一般社団法人の社員・機関

一般社団法人の社員

定義 従業員という意味ではなく、その社団法人のオーナーであり、社員総会で議案を提出したり、決議したりできる者をいう。
人数 設立時2名以上
資格
種類 可否 備考 すぎのコメント
株式会社 OK 定款の規定で、社員資格に一定の制限をすること
(例えば、社員は個人に限る、団体・法人に限る等)は、
それが「不当な条件」でない限り認められるので、
定款にそのような規定がある法人の場合、
非該当者は社員になれない。
NPO法人 OK
一般社団・財団法人 OK
任意団体 OK
外国法人 OK
外国人 OK
未成年 OK 法定代理人の同意等の制限があり
義務 従来の社団法人では、社員は会費を支払う場合(社員の経費・会費支払義務)が多かったが、一般社団法人の場合は社員の経費・会費支払い義務を定款に定めるかどうかは法人の任意。
退会
任意退社・退会 法定退社・退会 すぎのコメント
一方的な意思表示によりいつでも退社・退会できる。
  1. 定款で定めた事由
  2. 総社員の同意
  3. 社員の死亡または法人社員の解散
  4. 除名
「正当な理由」が必要
「社員総会の特別決議」が必要
「除名社員に対する事前通知」と「弁明の機会」の保証
「除名通知」の発送

社員総会

回答 すぎのコメント
定義 一般社団法人の社員で構成される最高意思決定機関
制限 社員に剰余金を分配する旨の決議はできない。
種類
  1. 定時社員総会(事業年度終了後3か月以内)
  2. 臨時総会(随時)
招集手続き
  1. 理事会で日時・場所、議題を決議
  2. 招集通知は1週間までに発送
書面または電磁的方法による議決権の行使を認めるときは、理事会で「議案」と「書面による議決権行使の方法」を決めた上で、招集通知を2週間以内に発送する。
普通決議
  1. 計算書類の承認
  2. 理事・監事の選任
  3. 理事の解任
総社員の議決権の過半数を有する社員が出席し、
出席した社員の議決権の過半数

※特別利害関係のある社員の参加もOK
特別決議
  1. 社員の除名
  2. 監事の解任
  3. 理事・監事の損害賠償責任の一部免除
  4. 定款の変更
  5. 事業譲渡
  6. 解散および継続
  7. 合併
総社員の半数以上の出席
総社員の議決権の3分の2以上
議決権 原則 社員ひとりに1個の議決権 @法人の活動に対する貢献度や会費等の経済的な負担に応じて、
ひとりの社員に複数の議決権を付与することができる。(定款に記載しておく)

A特定の社員がまったく議決権をはく奪されることは認められない。
議決権行使方法
  1. 代理人による議決権行使(代理行使)OK
  2. 書面または電磁的方法による議決権行使
社員の全員が、決議の目的事項の提案に同意の意思表示をしたときは、
社員総会の開催を省略することができる。
議事録 10年間保存  議事録署名人についての法令の規定はないので、定款の記載に従う

理事

定義 会社でいうところの取締役
欠格事由
  1. 法人
  2. 成年被後見人若しくは被保佐人、または外国の法令上これらと同様に扱われているもの
  3. 一般社団法人及び一般財団に関する法律、もしくは会社法の規定に違反し、または民事再生法、外国倒産処理手続きの承認援助に関する法律、会社更生法、破産法上の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、またはその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  4. 上記3に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで、または、その執行を受けることがなくなるまでの者
  5. 監事は、一般社団法人またはその子法人の理事または使用人を兼ねることができない
理事の数と代表権
理事の人数 代表権
理事会非設置 1人以上 各理事が代表権をもつ
理事会設置 3人以上 代表理事にみが代表権をもつ
理事の選任方法 社員総会の普通決議
代表理事の選任方法
原則 例外
理事会非設置 各理事が代表理事
  1. 定款
  2. 定款の定めによる理事の互選
  3. 社員総会の普通決議
理事会設置 理事会の普通決議で代表理事を選任
解任 社員総会の普通決議
任期 選任後2年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時社員総会終結の時まで
構成 法人税法上の非営利型法人に該当する法人の要件
  1. 各理事について、その理事およびその配偶者または三親等以内の親族等である理事の合計数が理事総数の3分の1以下であること。
  2. その定款に剰余金の分配を行わない旨の定めがあること。
  3. その定款に解散したときはその残余財産が国若しくは地方公共団体又は次に掲げる法人に帰属する旨の定めがあること。
  4. 特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含む。)を行うことを決定し、又は行つたことがないこと。
代表理事の変更 代表理事の変更登記が完了した段階で、すみやかに認可行政庁に代表者の氏名変更届をする。
  1. 公益目的支出計画等変更届出書
  2. 登記事項証明書

理事会

回答 すぎのコメント
定義 全理事で構成される業務執行決議機関
職務
  1. 業務執行の決定
  2. 理事の職務の執行の監督
  3. 代表理事の選定および解任
専決事項
  1. 重要な財産の処分及び譲り受け
  2. 多額の借財
  3. 重要な使用人の選任及び解任
  4. 従たる事務所その他の重要な組織の運営
  5. 理事の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他一般社団法人の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
  6. 役員等の損害賠償責任の免除
理事会が理事に委任することができないという意味
種類
  1. 定時理事会→3か月に1回以上
  2. 臨時理事会
定款で毎事業年度に4か月を超える間隔で2回以上その報告をしなければならない旨を定めることも可能
招集手続き
  1. 理事会の招集権者は、定款で定められた理事(理事長、会長)
  2. 招集権者以外の理事、監事は招集権者に対して理事会の招集を請求できる。
  3. 招集通知は1週間前までに各理事と監事に発する必要がある。
決議 理事の過半数が出席し、その過半数
特別利害関係のある理事は議決に参加できない
議決権行使方法
  • 代理人による議決権行使(代理行使)→不可
  • 書面または電磁的方法による議決権行使→不可
理事の全員が、決議の目的事項の提案に同意の意思表示をしたときは、理事会の開催を省略することができる。(定款の記載必要)
監事 理事会に出席する義務あり
議事録 出席した理事(定款で議事録に署名し、または記名押印しなければならない者を当該理事会に出席した代表理事をする旨を定めている場合にあっては、当該代表理事)及び監事は、これに署名するか、または、記名押印しなければならない。
  1. 代表理事を選定した理事会の議事録には、出席理事全員と出席監事全員の各個人の印鑑証明と同一の印鑑を押印しなければならない。
  2. 決議の省略が行われた場合であっても、議事録の作成は必要

一般社団・財団法人の決算

決算スケジュール
3月 理事会開催 事業計画書および次年度予算(損益予算)の承認・・・任意
5月 決算終了
  1. 貸借対照表、貸借対照表内訳表
  2. 正味財産増減計算書、同内訳表
  3. 財務諸表に対する注記
  4. 貸借対照表に対する附属明細書
  5. (財産目録は不要)
監事監査 事業報告、計算書類、公益目的支出計画実施報告書の監査
理事会招集 開催日の1週間前までに招集通知を発送
理事会開催
  1. 事業報告書、計算書類、公益目的支出計画実施報告書の承認
  2. 社員総会・評議員会の招集を決議
6月 社員総会・評議員会の招集 開催日の1週間前までに招集通知を発送
社員総会・評議員会の開催
  1. 計算書類の承認
  2. 役員の選任・解任決議
  3. 事業報告、公益目的支出計画実施報告書の報告
(理事会開催) 代表理事もしくは業務執行理事の選任がある場合
公益目的支出計画実施報告書の提出 下記書類を行政庁に提出
  1. 計算書類・附属明細書
  2. 事業報告書
  3. 公益目的支出計画実施報告書
貸借対照表の公告 定款に定めた公告手段を確認

内部承認手続き
監事監査 理事会 社員総会
評議員会
公告 行政庁提出
会計帳簿 × × × × ×
計算書類・附属明細書 BSのみ
事業報告 報告のみ ×
公益目的支出計画実施報告書 報告のみ ×

公益目的支出計画実施報告書

1.ポイント
(1)実施事業の継続義務
公益目的財産額の算定において、「継続して実施事業に使用する」として帳簿価額=時価とした資産にかかる事業については、公益目的支出計画が完了するまで継続しなければならない。
(2)時価評価した実施事業資産
資産の種類 移行登記時の評価 公益目的支出計画実施期間中の
正味財産増減計算書
公益目的支出計画実施報告書 備考
売買目的有価証券 時価あり 移行登記日の時価 評価益
評価損
実施事業収入に算入しない
公益目的支出に算入しない
実際の売却損益を公益目的支出計画に反映
満期保有目的債券 償却原価法 通常の償却益(運用益)
通常の償却損(運用損)
減損損失
実施事業収入に算入する
実施事業収入に算入する
公益目的支出に算入する
 (決して公益目的財産額の切り下げではない)
子会社株式及び関連会社株式 取得価額 減損損失 公益目的支出に算入する   (決して公益目的財産額の切り下げではない)
その他有価証券 時価あり 移行登記日の時価 評価益
評価損
実施事業収入に算入しない
公益目的支出に算入しない
実際の売却損益を公益目的支出計画に反映
時価なし 取得価額 減損損失 公益目的支出に算入する   (決して公益目的財産額の切り下げではない)
不動産 土地 移行認可申請年度の
固定資産税評価額
減損損失 公益目的支出に算入する   (決して公益目的財産額の切り下げではない)
建物 移行登記日の簿価 減損損失 公益目的支出に算入する   (決して公益目的財産額の切り下げではない)

(3)退職給付会計の導入
  会計上の処理 公益目的財産額 公益目的支出計画実施報告書
会計基準変更時差異 一括費用処理 全額減額済み
費用処理期間にわたる均等償却 未償却額を公益目的財産額から控除 予定された償却額は公益目的支出には算入しない
未償却額を公益目的財産額から控除せず 予定された償却額は公益目的支出には算入する

(4)その他の主要な事業
実施事業以外の「その他会計」について変更があった場合は次の点に留意しながら記載
@その他事業の事業内容や実施方法に変更があった場合
 →変更の内容、その理由および後継目的支出計画の実施に対する影響
A新たにその他の主要な事業を開始した場合
 →その旨、当該事業の内容及び公益目的支出計画の実施に対する影響

(5)資産の取得や処分、借入について
多額の借入や資産運用方針の大幅な変更については、あらかじめ届け出が必要。
この変更により公益目的支出計画の完了予定日までに完了しないとなる場合は、変更認可の手続きが必要